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韓国で、昨年登記ブローカーが登記事件で荒稼ぎをして逮捕されるという事件がありました。

2017年11月13日韓国日報は、
イム某(41)氏は2013年から昨年12月まで法務士と弁護士各1人ずつの名義を借りて京畿(キョンギ)高陽(コヤン)と坡州(パジュ)、仁川(インチョン)一帯とソウル南部および西部地域に自身の名前を取った事務室を整えて職員を雇用して登記申請事件3万件余りを処理した。
取りまとめた手数料だけ114億ウォン余りに達した。
と伝えています。https://www.e-profession.net/asiken/archives/6445

新規アパートが入れば数千世帯登記業務を一度に引き受けることができるという点を悪用、公認仲介士などと結託して一気に処理をしたのだそうです。なお、韓国でアパートというのは、日本のマンションにあたるもので、日本のアパートにあたるものは、韓国ではマンションというらしいです。

これだけの事件が非資格者によって行なえたことは、不思議に思えます。
なぜなら、韓国は不動産登記規則によって登記所に書類を提出できる職員の数を決めています。

不動産登記規則
第58条(登記所に出席して登記申請書を提出できる資格者代理人の事務員)①法第24条第1項第1号但書により登記所に出席して登記申請書を提出できる弁護士や法務士[法務法人・法務法人(有限)・法務組合または法務士法人・法務士法人(有限)を含む。
以下”資格者代理人”という]の事務員は資格者代理人の事務所所在地を管轄する地方法院長が許可する1人とする。ただし、法務法人・法務法人(有限)・法務組合または法務士法人・法務士法人(有限)の場合にはその構成員および構成員でない弁護士や法務士数程度の事務員を許可することができる。

許可を受けた提出代理人については、
同規則3項により地方法院長から登記所出入証が発行されます。

この出入証を登記所受付で確認することになっているので、冒頭のような事件の提出が何故可能なのかと言う疑問があるわけです。
しかし、この疑問に対しては、上記ニュースは、ソウルのある法務士の言葉を伝えています。
“登記申請書類に1万ウォンを挟んで書類を提出すれば提出事務員証がなくても受け入れるといううわさが出回っている”
“ブローカーが一度に数千件を処理できたことは事務員証がないのにむちゃくちゃに書類を受け付けたためと見える”

また同ニュースは、
大法院関係者は“電子的に提出事務員確認が可能な‘電子出入証’システムを開発している”として“早ければ来年から明確な提出事務慣行を定着させることになるだろう”と説明した。
と伝えています。

このための発注と見られる「身元確認電子トークン ソリューション」に関する提案要請書(2017年6月19日入札公告に添付)を読んでいます。

同要請書は、その理由として現状「提出事務員などの偽造・変造および権限ない身分証を利用した登記申請書提出時確認の困難がある」ため「電子的出入身分証導入によるリアルタイム身分確認および通知による危険予防」図るとしています。

具体的な提案要請概要は
○登記所提出事務員の身元確認用電子身分証に搭載される身元確認電子トークン ソリューション導入
○インターネットブラウザおよびモバイル機器接続に実現することができるように
適用
○要求事項を詳細分析して構成しなければならなくて、統合事業者と緊密な協力体系を構成すること
とされています。

ところでこの提案要請書には、全体事業、すなわち「不動産安全取引統合支援システム2次構築」についての概要が述べられています。
1.事業概要
 가.推進背景および必要性
  1) 法院行政処不動産安全取引総合支援システム構築
  2) 国土交通部不動産取引電子契約システム構築
  3) 『不動産安全取引統合支援システム構築事業』推進関連法院行政処と国土交通部の役割
 나.サービス内容
  1) 全体サービス概念図
  2) 不動産安全取引総合支援サービス
  3) 不動産安全取引システムサービス
  4) サービス利用事例
 다.事業範囲(2次年度)
  1) 不動産安全取引統合支援システム2次構築範囲
  2) 法院行政処不動産安全取引総合支援システム構築
  3) 国土交通部不動産取引総合支援システム構築
  4) 情報流通サービス拡大(行政情報共同利用)

ここまでは、「身元確認電子トークン ソリューション」が含まれる全体事業の内容で、不動産取引・登記に関する現状と今後の計画が明らかにされています。
この後「身元確認電子トークン ソリューション」に関する具体的要件等技術的な内容が続きます。

大きな視点では、まず所管庁が国土交通部と大法院(法院行政処)にまたがっていることが注目されます。不動産取引を所管する国土交通部は「不動産取引総合支援システム」において、電子契約-電子申告(取引)-電子納付(税金)-電子申請(登記)というものを構築していて、当初「登記申請」の部分で、公認仲介士に任せることを考えていた国土交通部と大法院(大韓法務士協会の強い反発を受けてと考えられますが)との対立構造が見られたものが、ここにきて「電子政府」という大きな枠組みでの協力関係ができたと見られます。

電子申請が当然であり、電子契約を進めるならそれとの接続を許否できないわけでしょうから、協力関係もできたということでしょう。

大法院は、国土交通部の「不動産取引総合支援システム」に対抗するかのように「不動産安全取引総合支援システム」構想(別名「登記簿先進化方案」)を打ち出し、現在進行中であるわけです。
この「不動産安全取引総合支援システム」は、2015(平成27)年に大法院司法政策研究院が公表した「不動産登記制度の改善方案に関する研究」が基礎となっていると考えています。なお本研究は拙訳ではありますが、これを総研に提供し、研究の資料としていただいています。

この研究においては、
結論として登記制度の発展方案を(1)登記前段階(2)登記段階(3)登記後段階に分けて検討し、登記前段階においては①不動産関連権利情報の提供②事前公示制度、登記段階においては③登記原因証書公証制度④登記原因証書(準)永久的保管⑤印鑑証明制度の改善⑥資格者代理人による本人確認規定、登記後段階においては⑦登記の公信力認定問題⑧被害補償制度の必要性をあげています。

まず登記前段階においては、売主と買主の当該不動産に対して持っている情報の非対称から来る危険性を防止するため、不動産に関する情報を提供するとしています。具体的には登記を対抗要件としない権利(賃借権)などです。どのような権利が予定されているかについては同研究は7つの情報を上げています。

各情報とその必要性は
(1)登記記録 登記記録要約表 -不動産権利関係把握
(2)事前公示 事前公示内訳 -他契約進行の有無判断
(3)確定日付 確定日付存否と件数 -優先返済権を持つ権利者可否判断
(4)転入世帯 入居者の有無、入居日時 -優先返済権および対抗力の有無判断
(5)納税情報 滞納情報 -当該税による差押/仮処分等の危険判断
(6)住民登録 未成年の有無、真正性 -真の権利者可否判断
(7)後見登記 不存在の有無 -不動産取引の効力判断
とされています。
この内、確定日付付与情報についてはその提供が昨年12月22日から始まりました。

なぜ確定日付や転入世帯情報が重要なのかということは韓国の建物賃貸借の対抗要件と関わっています。
賃借権の登記がない場合にも賃借人が住宅の引渡と住民登録を終えたときにはその次の日から第三者に対し効力が生じて、この場合転入届をしたときに住民登録になったとみなす(住宅賃貸借保護法第 3 条第 1 項)。

不動産に関する情報の公開の部分に関して、国土交通部は2016(平成28)年1月から、18種の不動産関連情報を1種の不動産総合証明書に入れて発行する「一事便利」サービスを開始しています。
18種の不動産情報とは、以下の通りです。
1)土地台帳
2)林野台帳
3)共有地連名簿
4)敷地権登記簿
5)地籍図
6)林野図
7)境界点座標登録簿
8)建築物台帳(一般建築物)
9)建築物台帳(総括表題部)
10)建築物台帳(集合表題部)
11)建築物台帳(集合専有部)
12)土地利用計画確認書
13)個別公示地価確認書
14)個別住宅価格確認書
15)共同住宅価格確認書
16)登記簿謄本(土地)
17)登記簿謄本(建物)
18)登記簿謄本(集合建物)
なお、16)~18)は全部情報ではなく一部情報です。

大法院は、情報公開の分野に関して、「不動産権利情報提供制度」を構築し、現在以下の情報を提供しています。(「不動産情報要約閲覧サービス等利用案内」による。)
□ 不動産情報要約において提供するサービス情報
  ● 不動産登記事項証明書要約情報
  ● 当該不動産の登記申請処理中である登記申請情報
  ● 当該不動産の地図イメージ情報
  ● 国土交通部で提供する土地所在図の個別告示地価
  ● 国土交通部で提供する土地利用計画情報
  ● 国土交通部で提供する地籍図情報
  ● 売買時、賃貸借時確認しなければならない事項に対する情報
□ 確定日付付与状況において提供されるサービス情報
  ● 確定日付付与日/番号
  ● 確定日付付与期間
  ● 賃貸借期間
  ● 保証金/借入れ
  ● その他事項
この内、当該不動産の登記申請処理中である登記申請情報については、事件中であってもその旨を記載して証明書を出してはどうかと、連合会役員でいたときに提案したことがありましたが、必要性と費用対効果のハードルが結構ありますね。

なお、国土交通部提供情報が含まれていますが、これは国土交通部の「不動産総合証明書」に登記情報(一部)を提供していることとのバーターなのだろうと思っています。

さて、ここまでを現状とすれば、今後どのように進展していくのかということについて興味のわくところですが、これについては先の「身元確認電子トークン ソリューション」発注に伴う「提案要請書」にその概要が述べられているところです。

お正月らしく夢物語をするならば、タイムマシンで未来に行ったとします。タイムトラベルが可能かどうかと言うお話は横において、そこで大きく姿を変えた不動産登記制度を見たとします(司法書士もいるでしょう)。何十年後にはこんな風になるのか、という感慨を抱くことになると思います。

そんな近未来を垣間見ることが、前記「提案要請書」においてできます。日本においてそうなるかどうかは別としても、人の作る制度であり、かつ情報が飛び交う社会であれば、思いつくこと、考えつくことはあまり大差ないように思えます。

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Author: hasegawa

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