
法務士を補充する必要があるときに試験を実施すればよいとされていた法務士法施行規則が憲法に反すると、憲法裁判所に訴えられた事件です。
判決文を見つけることができましたので参考に仮訳しました。
なお「韓国憲法裁判所重要判例44」(在日コリアン弁護士協会編著 日本加除出版 平成22年刊)にも取り上げられています。
同書に、事後経過が書かれています。
その一部を抜粋させていただきます。
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なお、法院行政処は、本決定からほぼ2年後の1992年7月19日に第1回法務士試験を実施した。その後、1998年までに4回の試験が実施され、現在は毎年試験が実施されている。
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法務士法施行規則に対する憲法訴願
(1990.10.15.89헌마178全員裁判部)
[判例集2巻、365~386]
【判示事項】
1.司法府で制定した規則の憲法訴願の対象性
2.上の規則に対する憲法訴願と補充性の原則
3.職業選択の自由の侵害与否(法務士法施行規則第3条第1項の立法趣旨、比例の原則の内容)
4.平等原則の侵害与否(立法形式の自由の領域)
【決定要旨】
1.가.憲法第107条第2項が規定する命令・規則に対する大法院の最終審査権というのは具体的である訴訟事件で命令・規則の違憲与否が裁判の前提になった場合法律の場合とは違って憲法裁判所に提請関係なく大法院が最終的に審査することができるという意味であり、命令・規則それ自体によって直接基本権が侵害なったことを理由にして憲法訴願審判を請求することは上の憲法規定とは何の関係がない問題だ。
나.したがって立法府・行政府・司法府で制定した規則が別途の執行行為を待たないで直接基本権を侵害したということである時には全部憲法訴願審判の対象になることができるものだ。
2.가.この事件で審判請求の対象ですることは法院行政処長の法務士試験不実施すなわち公権力の不行使でなく法院行政処長によってその裁量により法務士試験を実施しなくても大丈夫だと規定ある法務士法施行規則第3条第1項だ。
나.法令自体による直接的である基本権侵害与否が問題なった場合、その法令の効力を直接争うのを訴訟物にして一般法院に救済を手に入れることができる手続は存在しないのでこの事件では他の救済手続を差し障りがなくすぐに憲法訴願審判を請求できるものだ。
3.法務士法施行規則第3条第1項は法院行政処長が法務士を補充する必要がないと認めれば法務士試験を実施しなくてもかまわないということとして上位法である法務士法第4条第1項によってすべての国民に付与された法務士資格取得の機会を下位法である施行規則で剥奪したものなので平等権と職業選択の自由を侵害したものだ。
裁判官イ・ソンニョルの反対意見
1.法務士の業務内容の特殊性、法務士の資格に関する規定方式の特殊性を検討してみれば法務士法第4条第2項が法務士試験の実施に関して必要ある事項を大法院規則に定めるようにしたことは法務士試験に合格ある者は誰でも法務士業を選択してこれを行使することができるようにしようとしたところにあるのではなくて、かえって試験実施に関する具体的方法と手続だけでなくその実施時期まで合わせて規定することができるように委任したものと解釈できる。
2.試験の方法によって法務士の資格を取得するのを制限した上の規定はその制限の目的および必要性、制限なる職業の性質および内容、制限の程度および方法など色々な側面でこれを検討してみれば、方法の適正性、制限の必要性および被害の最小性の原則のどれにも反しないので憲法第37条第2項で定める比例の原則にも抵触ならない。
3.法務士制度と関連してその制度の本質をどのように理解するのかおよびその業務の内容はどんなことで規定するのかしたがってその資格をいかなる方法でいかなる能力や経歴を持つ者に附与するのかの問題は根本的で立法機関の立法形成の自由に属する領域としてその判断は一次的で立法機関の裁量にまかせていてその判断が明確に不合理と不公正にならない限りこれは尊重ならなければならない。
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