【韓国】刑法上電子人(e-person)の可能性

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チョン・ジヨン教授(延世大ロースクール) 入力:2019-09-05午前9:22:38

I. 序言
2017年ヨーロッパ議会はAIに‘電子人(格)’という法的地位を付与する必要があるという決議案を通過させたが、2018年人工知能関連専門家たちは人工知能による被害発生は既存法規定で十分に解決することができ、かえって人工知能に法人格を付与するのはロボット製造者が責任を回避しようとする趣旨だと批判した。

結局執行委員会はAIの法人格に対する決定は留保して、AIがもたらした社会経済的変化に対する準備支援、適切な倫理的・法的体系を保障するガイドラインの準備を決めた。

AIに対する法人格付与問題は主に民事法的観点でAIが損害を発生させた場合、責任をどのようにすべきかという議論から出発したが、ここでは刑法的観点で議論を展開する。

II. 刑法上‘人’の概念拡張の可能性
刑法規範は自然人である人間に合わせて作られて適用される。
人が故意・過失により構成要件的結果を引き起こして、行為の不法性を認識して、発生した結果を回避できた場合にだけ行為者が刑事訴追されて処罰される。
このように私たちの刑法理論と実務は人間に責任を帰属させることと定めている。

もちろん法人処罰を肯定する場合のように責任帰属の主体に対する境界領域では人間に対する責任帰属の原則が修正、変化している。
法人の犯罪能力を肯定する見解もあるが、通説・判例は相変らず法人の犯罪能力を否認する。
ただし両罰規定の存在で自然人の処罰に付加して法人がこれを疎かに管理・監督したことに対する責任を問うという趣旨で法人を処罰する。
このような意味で我が国ではまだ責任帰属と関連した原則を根本的に変更していることはない。

法人の場合で一歩進んで人工知能に対し犯罪能力を認めて責任帰属原則を適用しようとする根本的な変化はまだ時期尚早だと見られる。
しかし刑法上人間だけが法人格体と認定されるのかの問題は新しい討論対象になっている。

特に英米やヨーロッパ一部国家で企業(法人)を独自に起訴して処罰する。
人間が刑法規範の受信者という点には疑問がないが、問題は刑法規範の受信者になることができるための要件は何か?この問題に対しては社会変化により多様に答えられることができるのはでない街だ。
特に将来には電子である(e-person)の法人格性を認めてそれに対する刑法的責任を肯定しなければならないのではないかである。

III. 法人格の差別化
人間は全部法人格体であり、法人格体は人間でなければならないという議論は過去奴隷制度が存在した時期から現在までも法的な責任議論として相変らず有効である。
法人格に対する論争は民事法的・刑事法的思考が互いに疎通して歴史的発展過程を経てきた。

しかし民事法的法人格付与が必然的に刑事法的法人格付与を伴うものではない。
法人格付与は社会内で規範化の過程であり、これは当該法規範が社会内で遂行する機能や目的に関連するためである。

損害の適正な保全という民事法が持つ社会的機能と犯罪の予防という刑事法が持つ社会的機能の差異は法人格に対する統一的な立場を取ることを要求しはしない。

むしろ場合によっては民事法上法人格が付与されなかった権利能力主体(法人格ない社団や法人格ない財団)にも犯罪予防という社会的機能を達成するために必要ならば刑事法的法人格を付与することもできるだろう。

IV.人工知能に法人格の付与の可能性
1. 法人格の主体
刑法上人格主体は自身との倫理的・感情的関係を発展させることができて、過去の省察を通じて現在の行動を発展させることができる人である。
すなわち自身の過去に対する認識や道徳的自己反省への能力を持つ主体だけが刑法上‘人’となった。

現在の人工知能を搭載したロボットは家事コンパニオン ロボット、手術ロボット(ダヴィンチ)、病気診断予測ロボット(ワッソン)、囲碁ロボット(アルファ碁)、訴訟の勝訴率を予測するシステム(ROSS、レックスマキナ)等多様な分野で活動する。
しかしこのようなロボットが過去の行動を倫理的に反省して振り返ってみたり省察能力を持っていると言わない。
したがって法人格の主体は道徳的自己反省への能力を保有しなければならない存在という意味で見れば現在の状況で人工知能は刑法垂範者に該当しない。

2.人工知能に法人格の付与の可能性
人工知能の法人格性を否定する試みがいつまで適切で合理的な主張と受け入れられるのかに対しては疑問である。
かえって遠くない将来に法人格の脱人間化やAIの人間化という観点で人工知能に法人格性を付与することが可能なことと判断される。
1)法人格の脱人間化
トイブノによれば法人格体の地位を取得するために必ず人間と同じ思考、魂、省察能力、共感能力などが必要なことはないとみる。
したがって人間だけが法人格の主体に制限されることはなくて、人間でない非人間もまた法人格の主体と認定されることができるという点で法人格の脱人間化が主張される。

法人格ない実体は社会体系内の疎通を触発しないで、かえって法人格ない実体が社会体系に微弱な影響力を行使する時に社会体系はこの実体が出す刺激を騒音と見なして体系内の疎通で排除する。

しかし社会が複雑になって法人格ない実体が出す騒音が無視できないほど大きくなって社会体系内の疎通を邪魔し、またはこれらの助けなしでは疎通が進行されることはできない段階に達すれば社会体系はこのような実体を認めて疎通体系に編入させなければならない状態に到達することになる。

このような状況に到達すれば結局法をはじめとする社会体系は社会体系の外の実体に行為主体の性格である法人格を付与することによって社会体系内の疎通の輪を担当するようにする。
人工知能は自ら事実上自律的な行為能力を取得する段階に進行していて、以前に私たちが予想できなかった騒音を発生させることになるだろう。
このような人工知能の騒音が結局社会体系内の疎通体系に関与させるほかはない状況になって人工知能に法人格を付与するほかはないだろう。

2)人工知能の人間化
去る数年間の技術発展を見れば人工知能はすでに自身の独自の経験判断にしたがって多様な選択肢中で選択をして、このような選択を上位の価値体系に批判的に検討・分析する役割を遂行する能力を有している。

人間が経験と学習を基礎で思考して決める存在ならば、人工知能もすでに存在するデータを活用して新しい経験の学習等を通して自身の活動を決めるという点で大差ない。
かえって多様な専門分野で利用される人工知能は人間よりはるかに合理的で自由に行動することができる。
問題はこのような人工知能が人間と同じ意識を持つことができるのかと人工知能に人格の同一性を認められるのかである。

最初に、心は物理的宇宙の一部である脳活動の結果であり、ロボットもよく作りさえすれば人間と同じ思考、感情、意図を実現することができるという。
最近の脳科学ではこのような人工知能が意識を持つことができるということを可能になることと見て、かえって問題は具体的にそれをどのように確認するのかに関心が集中している。
したがって不可能だと考えられた人工知能の自己意識能力に脳科学の立場で新しい接近が成り立っているという点に刑法学の立場でも注目するに値する。

二番目、規範的責任概念により犯罪を人格の表明といってもそういう人格に帰属した意識の同一性が責任の前提になる。
すなわち人格は単に意識を通じて過去の存在が現在の存在まで続く同一性を見せることだ。
これに伴い、過去の行動に対し現在の自身に責任を負えるようにして、過去の行動を現在の自身のこととすることで自分自身のせいにすることができるようになる帰属が可能になるものである。
人工知能を搭載したロボットが意識を持つことができるという点を肯定するならば自らの行為に関する記憶による同一性もまた肯定することができる。

V.結語
人工知能が将来どの程度まで発展するのかは想像するのが容易でない。
人工知能の刑事責任問題は私たちの刑法体系と理論を再編成する契機になるだろう。
将来の法的人格体として人工知能に対する議論で一つ確実なのは哲学的・科学的思考に基づいて私たちの刑法の目的を達成するのに最も適切な方案を用意しなければならないということである。
電子人が仮想世界にだけ留まっているならばその仮想世界で責任を負担すれば良い。

しかし電子人が現実世界で活動するならば現実世界でも責任を負担することが現実世界の統制に役に立つだろう。
現在まではささいに見えるが近い将来に私たちの生活世界に人工知能が積極的な活動を担当する現実になるだろう。
ここで電子人に対する法人格付与と処罰を通じて刑法が達成しようとする目的が実現されるはずである。
このような過程で現在の刑法原則は深刻な挑戦に直面して、それでも私たちは途方もない変化に対する恐れを克服して新しい刑法モデルを探していかなければならないだろう。

チョン・ジヨン教授(延世(ヨンセ)大ロースクール)

【出典】韓国/法律新聞
https://www.lawtimes.co.kr/Legal-Info/Legal-Info-View?serial=155548

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Author: hasegawa

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